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監査法人の人的体制要件引き上げ
2026.04.17
日本公認会計士協会は、会計不正問題を受けて、会計業界全体の“資本化・組織化”へと舵を切り始めました。2027年7月総会での正式決定を目指しています。
●淘汰される中小監査法人
日本公認会計士協会は、本年1月、上場企業を監査する監査法人の登録要件を厳格化し、社員(“パートナー”と称します)となる公認会計士を増員する方針を発表しました。オルツ社の会計不正問題を受けての対応となりますが、2027年7月総会での正式決定を目指すとしています。これにより、中小監査法人の再編がより一層進むものと予想されますが、影響は多方面に及びます。監査法人の寡占化が進むことにより、中小の監査法人は大手に吸収されるか、会社法監査の専業になります。資質が無くパートナーになれない公認会計士は、付き合いのあった企業に対して積極的に働き掛け顧問や役員に就任したり、“元・監査法人所属会計士”といった肩書でコンサル業界に参入したり、(税理士試験を受けずに)税理士登録を行って、不慣れな税理士業界に参入することもあるでしょう。コンサル業界では自然に淘汰されることになりますが、税理士法に基づき独占業務が認められている税理士業界からは容易に退出しないものと予想されます。
●公認会計士の本来の役割
かつて公認会計士は、登録さえすれば、無条件に税理士資格を持つことが出来ました。このため、「所得税の申告書を作ったことが無い」という“公認会計士出身の税理士”が存在しているのも事実です。こうした弊害を鑑み、税理士会側からの強い要請で、税理士登録する公認会計士には税法研修が課されるようになりましたが、本来の公認会計士の業務は会計・監査業務です。彼らや彼女らが税理士資格の登録を行っても、志や経験の無い税理士が巷に溢れるだけと考えられなくもありません。真摯に税務に臨んでいただければ、次第に処理能力は向上するかもしれませんが、本来は公認会計士になりたかった人達です。大上段に構えて“お墨付き”を与える立場であった公認会計士が「顧問先に寄り添う税理士になり切れるのか?」という懸念がどうしても付き纏います。
●試験を受けずに税理士登録
堂々と“公認会計士”を併記されている税理士もいますが、通常、税理士に依頼される方々が“税理士事務所”という看板だけで“公認会計士出身の税理士”を見分けるのは難しいでしょう。また、その違いをご存知の方は限られるかもしれません。判断いただいた結果、不適格とされる税理士が続出するようでは、税理士業界全体、強いては、我が国の税制に対する不信感にもつながります。勉強熱心な公認会計士が多いとは思いますが、税法研修だけで税理士登録する公認会計士には、高い志をもって税理士業界に臨んでいただかねばなりません。
●パートナー資質の無い公認会計士の受け皿
かねてより日本税理士会連合会は、税理士の資質を維持・向上させるためにも、「公認会計士が税理士となる際に、税法に属する科目に合格すること」を求めています。その結果が前述の税法研修なのですが、日本公認会計士協会は、「これ(税理士試験の合格)はまったく検討するに値しないもの」として反対していました。仮に資質が無くパートナーになれない公認会計士の「食い扶持を稼ぐため」であっても、本来業務と異なる資格の取得試験を嫌がること自体いかがなものかと思いますし、「これ」呼ばわりをして「検討するに値しない」とは何とも傲慢な印象を受けてしまいますが、すべての公認会計士が傲慢なわけでも無いでしょう。「税法は“法律”であって会計基準や監査基準は“基準”に過ぎない」として、安易な税理士登録に警鐘を鳴らす公認会計士がいることを忘れてはなりません。むしろ、上場を目指される法人であれば、“公認会計士出身の税理士”の方が望ましいかもしれません。
●これからの税理士選び
前述の通り、「所得税の申告書を作ったことが無い」という“公認会計士出身の税理士”が存在しているのは事実です。そのような税理士であれば、相続税などの他の申告書も作れない可能性があります。今後、税理士に依頼される方々は、(従来からの)登録しただけの“公認会計士出身の税理士”に加え、研修だけで税法を済ませた“公認会計士出身の税理士”が増えることを念頭に税理士を選ばなければなりません。あえて“公認会計士出身の税理士”に依頼するのであれば、実績や経歴を確認するなど、より一層見極める必要があるでしょう。