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令和7年からスタート「ミニマムタックス」― 超富裕層への新たな課税強化
2025.06.13
令和7年(2025年)から、新たな所得税の仕組み「ミニマムタックス」が導入されます。これは、いわゆる「超富裕層」とされる方々に対して、一定以上の税負担を求める制度であり、税の公平性を確保するための大きな一歩といえます。
1.背景:「1億円の壁」とは?
日本の所得税は「累進課税制度」を採用しており、所得が多いほど高い税率が適用されます。最高税率は55%(住民税含む)ですが、実際には所得が1億円を超えると税負担率が下がるという現象が起きていました。これは、株式譲渡益や配当所得などの金融所得が分離課税(20.315%)で計算されることにより、実効税率が低くなるためです。
このような“逆転現象”は、「1億円の壁」として社会的な問題となっており、高所得者層の税負担が中間層より軽くなる不公平さが指摘されてきました。
2.「ミニマムタックス」とは?
このような状況を踏まえて導入されるのが、ミニマムタックス(最低税率制度)です。
制度の概要
①対象者:年間の合計所得が30億円を超える個人
②制度内容:現行の課税方法にかかわらず、所得全体に対して一定の税負担率(5%)を下回る場合、その差額分を追加で課税する
たとえば、実際の申告に基づく税負担が15%であった場合、22.5%との差額7.5%分について追徴課税されることになります。
これは、所得の内訳に関係なく、超富裕層には最低限の税負担を求めるというものです。
3.対象となり得るケースとは?
所得が30億円を超える方は限られていますが、以下のような取引がある方は注意が必要です。
①M&A(企業売却)や株式譲渡で一時的に高額な所得が発生する場合
②相続対策や事業承継に伴う自社株評価の上昇
③大規模な不動産の売却
④組織再編、合併、株式交換などによる資産移転
スタートアップ経営者の株式上場時のキャピタルゲイン
これまでの税制では、これらの所得の多くは分離課税で低率で処理されてきましたが、今後は全体の税負担率が22.5%を下回らないよう強制的に補正されるため、事前のシミュレーションや計画的な対策が重要です。
4.今後の影響とポイント
①税務戦略の見直しが必要:富裕層向けの節税スキームの見直しが求められます
②資産移転のタイミング調整:高額譲渡などを行う際の時期に注意が必要です
③一時的な超高所得でも対象になる可能性あり
このミニマムタックスは、国税庁が所得の透明性と税負担の公平性を重視する姿勢を明確に示した制度です。
当社では、相続・事業承継を含めた富裕層向けの税務対策に幅広く対応しております。制度の詳細や影響の可能性についてご不安な点がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
(※文中の数値や制度は2025年6月時点の法令に基づいております)